背中のこり・背中の凝り・背中の痛み
【疾患】
背中の痛みで病院受診すると、X線などで明らかなヘルニアや脊椎の変形もなく、また血液検査などで内臓疾患の異常なども出なければ、診断名としては筋筋膜痛症候群とされることが多いと思います。
病院では「背中の筋肉が凝っているのでしょう」との説明と、牽引やホットパックなどの物理療法を中心に簡単なリハビリの処方と軽い鎮痛剤やビタミン剤がよく出されますが、物理療法だけでは背中の痛みがあまり軽減しないので、病院受診を止めて体を触ってくれる鍼・マッサージ・整体などに通うようになる人も多いようです。
背中の中心辺りの漠然とした鈍い痛みを訴える人が多く、仕事や家事を行っていると背中の痛みや凝りが増してくるという訴えもよく聞かれます。周囲の人からは姿勢が悪いと指摘されることも多く、姿勢を正す(背筋を真っ直ぐ伸ばす)事に注意をするのですが、背中が疲れてくる場合や別の事に集中して姿勢を意識していないと、自然と猫背ぎみになってしまうという人が多いですね。
毎日痛みは持続的に感じており、検査では原因が出ないので「何か悪い病気では?」と不安が強く増している方も多いようですし、原因が分からないから「線維筋痛症では?」などと考え悩んでいる方も多いようです。
【評価と経過】
背部痛や筋筋膜性疼痛症候群などの診断が出ることがありますが、画像的な異常も出難いため医療関係では簡単な痛みの問題と扱われることも多いです。病院を受診しても「湿布をくれるだけ」「リハビリでは牽引や温めるだけ」というように簡単に扱われることの多い問題でもあります。
画像的な異常も出ないが患者本人は背中の痛みを長年感じており、典型的な慢性痛として考え対処することが求められます。
背中の中心辺りの漠然とした鈍い痛みを訴える人が多く、仕事(パソコン)や家事を行っていると背中の痛みや凝りが増してくるという訴えがよく聞かれます。周囲の人からは姿勢が悪いと指摘されることも多く、姿勢を正す(背筋を真っ直ぐ伸ばす)事に注意をするのですが、意識的に背中を真っ直ぐ正していても背中が疲れてくると痛みが増して猫背に戻ります。
背中を見ると腰から首にかけて中心に縦の凹みがあります。この凹みの部分に背骨があるのですが凹みのすぐ両側に筋肉の盛り上がりがあります。これが最長筋と呼ばれる背中の筋肉です。この最長筋に力を入れて筋肉を縮ませることで背中を反る方向へ動かすことが出来ます。背中の筋肉(最長筋)の働きにより重力に逆らって姿勢を正すことが出来ます。
背中の痛みのある人では、この最長筋に筋硬化を起こしている状態が非常に多いです。筋硬化を起こしている状態は基本的に肩こりと同じです。その痛みや凝りを肩ではなく背中の真ん中あたりで感じている状態で、単純に考えると背中の中心辺りの筋肉の凝りと考えて良いと思います。
背中の最長筋を中心に筋硬化を起こしている筋肉はスパズム(持続的な筋肉の攣縮)を生じている状態であり、最長筋は慢性的な酸素不足の状態です。姿勢を真っ直ぐに正すことは背中の筋肉に力を入れて筋肉を縮ませるのですから、慢性的にスパズムを生じている筋肉を縮ませれば酸素不足を促進させ、姿勢を意識的に真っ直ぐ行い続けると痛みや凝りが増加してきます。
背部筋の硬化改善が安定的な痛み軽減にはポイントになります。
背部痛の状態としては大きく分けて以下の違いがよく見られます。
(1)重度の背部痛と筋硬化
背中全体が触ると非常に硬く凝っている、背中を強く指圧したり強く足で踏んでもらっても気持ちいいと感じる程度。背中の痛みや凝りは鈍く弱い感じ(例:ほっぺを強くつねった時のような鋭い痛みではない)で、何十年も毎日のように我慢出来る範囲ではあるが持続的に背中全体(特に背中の中心部位)に鈍い痛みと凝りを感じている。マッサージは強く押されないと効かない。
慢性化による筋硬化の持続が長く、背中の筋肉では長期間(数年〜何十年)の毛細血管の圧迫による循環不良(酸素供給不足)が起き、背中の筋肉・皮膚・靭帯などに分布する神経にダメージを受けて(一部の神経が死んできている状態)いる状態。このため、凝りや痛みの発生する原因として背中の筋肉硬化が存在するが、痛みを伝える神経がマーサージで押される圧力を上手く感知できず、感覚が鈍くなり痛みを感じきれていない状態と考えられる。また、表層の筋硬化も強くなり(背中の表面も硬い)、深部の筋硬結に圧力が伝わりにくいこともマッサージで押される圧力が増す傾向への原因になっている。
(2)中等度の背部痛と筋硬化
背中の凝りは慢性的に感じるが、背中を押されると気持ちいい場所と痛みが出る場所の違いがある。普段から背中の痛みや凝りは持続しているが、仕事などが忙しい日が続く期間などに痛みが増すので、1ヶ月単位の変化で考えてみると強く痛みや凝りを感じる日と弱く感じている日の違いがある。背中の痛みや凝りを持続的に感じ初めて数年程度であり、ここ数年だんだん体が硬くなってきている実感がある。マッサージでは背中を押されると「痛気持ちいい」と感じる部位が多いけど、強めに押されると鋭い痛みが出る部分もある。強くマッサージすると揉み返しが出ることがある。
一つの筋肉全体の筋硬化へ進む前の状態であり筋肉内に出来ている筋硬結(一般的に肩こり腰痛のある人で筋肉内にしこりがあると表現される物)の部位と無い部分の背中の硬さに違いが残っている状態。筋硬結のある部位は押されると痛みとして感じやすく、無い部分は気持ちいいと感じることが多い。(1)の重度症状に比べると背部筋の硬化は弱く皮膚・靭帯・筋に分布する神経へのダメージも少なく圧力を痛みとして捕らえることが出来るので、(1)と同じ圧力では痛みを敏感に強く感じるが、これは神経の活動が正常であり筋硬化もまだ少ない方で、圧力がより深部筋まで到達しやすいためと考えられる。背部筋の柔軟性と伸張性などがまだある程度は維持できている状態といえる。
背中の中心部分に疲労が強い時などに痛みや凝りを強く感じ、背筋を正しているのが辛く感じる。意識していないと猫背ぎみに姿勢がなることが多い。普段は背中の中心より肩や腰の痛みや凝りの方を強く感じている人も多い。普段の生活で感じている背中の痛みや凝りは(1)より強く、押されると感じる痛みは(3)よりは軽いのが特徴として見られます。
(3)軽度の背部痛と筋硬化
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