人間のすべての細胞に存在する必須脂肪酸
DHA(Docosahexaenoic Acid=ドコサヘキサエン酸)は魚の脂肪に多く含まれる「不飽和脂肪酸」で私たちの体に必須の脂肪酸です。脂肪酸とは、脂質いわゆる油を構成する元になるものです。DHAは人間のすべての細胞(特に、目、脳、心筋、胎盤の順に多く含まれる)に存在します。DHAが不足すると体の様々な悪影響を及ぼしますが、体内ではわずかしか作られないため、外部(食事やサプリメント)から摂取する必要があります。
DHAが頭を良くする栄養素として注目された背景には、1989年10月、当時のロンドン動物園付属ナフィールド比較医学研究所のマイケル・クロフォード教授の著書「原動力」の中に
「日本人の子供が欧米人の子供に比べて知能が高いのは、日本人が魚を多く食べてきたことが、その理由のひとつである。」
と書かれていたこと� �ニュースとして伝えられたことがあります。
日本人が欧米人と比べて、脳血栓、心筋梗塞、またうつ病が少ないと要因の一つとして魚をよく食べることによりDHAの摂取量が日本人が多いことが研究から考えられています。
脳の神経細胞の働きを良くする
脳には約140億個の細胞があるといわれており、その細胞には「ニューロン」と呼ばれる神経細胞があります。このニューロンから伸びた突起と他の神経細胞が結合している部分を「シナプス」といいます。私たちが思考したり、感じたことの情報は神経伝達物質としてニューロンのシナプスから次のニューロンのシナプスへと伝わっていきます。
DHAは情報のやりとりをするシナプス膜を柔らかくすることにより、シナプスの働きを良くする働きがあります。シナプスの働きが良くなることにより情報の伝達がスムーズになり、その結果、記憶力、集中力の向上が考えられます。
DHAと記憶力の関係 臨床試験
一方のラットにDHAを、もう一方のラットにサフラワー油を食べさせ、双方のラットをY字型迷路で正しくえさにたどりつけるかを試し比較することで、DHAと記憶力の関係を調べた実験があります。その実験ではDHAを食べさせたラットの方が正解率が高くなりました
胎児の脳の形成には母体からのDHAが必要
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胎児の脳の形成にもDHAは大きく影響します。脳の神経細胞の数は胎児の脳が形成される時に決定し、生まれた後では神経細胞の数は増えません。胎児の時に母体から十分の量のDHA摂取できるように、妊娠中にDHAを積極的に摂取することが脳の健康な赤ちゃんを産むことにつながります。(注意)
(注意)妊娠中に魚を多く取るリスク
DHAを積極的に摂取する手段として魚が考えられますが、妊娠中に魚を食べるうえで注意があります。
日本の魚にはアメリカに比べれば少ないですが、水銀が含有されています。水銀は、中毒になると神経の働きを損なう作用があり、胎児は特に影響をうけやすいです。
厚生労働省も平成15年6月に「魚介類に含まれる水銀が胎児に影響する恐れがあるとして、妊娠している方または現時点でその可能性のある方は、食べる量について注意することが望ましい(ただし日本の魚はアメリカほど水銀含有量が多くなく、なかでも小魚は含有量が少ないので食べ過ぎなければ大丈夫)」という指示がでています。
DHAが未熟児の知能にあたえる影響 臨床試験
体重1500gの未熟児を「母乳で育てたグループ」と「粉ミルクで育てたグループ」にわけ8年後の知能指数の違いを調べました。
「粉ミルクで育てたグループ」の平均IQが92.8であったのに対し「母乳で育てたグループ」の平均IQは103.0でした。
母乳の栄養素のうち、脳に影響をあたえると考えられている栄養素はDHAしか考えられないことから、DHAが未熟児の知能指数を改善に影響したと考えられます。
うつ病の人はDHAレベルが低い
うつ病のひとのDHAレベルがそうでない人に比べ有意に低いことが報告され、DHAとうつ病発生との関連が注目されていました。1999年にDHAやEPAを含むオメガ3脂肪酸の投与によりうつ症状が改善するという結果が発表されました
うつ病は、神経伝達物質の量や神経伝達物質を受け取るシナプスのレセプターの状態が関係していると考えられています。DHAには神経伝達物質のセロトニン(うつ病の治療薬の中にはセロトニンの濃度を濃くする作用がある)の感受性の向上に有効と考えられています。
うつ病とDHAの関係 臨床試験
フィンランド・クオピオ大精神科のA・タンスカネン医師らのグループが男女市民約3,000人(25歳〜64歳)を無作為に抽出し、そのうち1800人について分析した結果、週に2回以上魚を食べる人は、そうでない人に比べて、うつ病の危険率が0.63倍と低くなっている結果がでました。
DHAと産後うつ病の関係 臨床試験
"ゲームを窒息させる"
National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism研究グループが、イギリス女性11,721人のデータを分析したところ、妊娠3期にn-3系脂肪酸を多く摂ると、妊娠後8カ月までにうつ病に罹る危険性が低くなると報告しています。
DHAと精神安定の関係 臨床試験
DHAと精神安定との関係を調べた研究があります。
濃縮魚油カプセル(DHA1.5〜1.8g含有)を3ヶ月服用したグループと大豆油のカプセルを服用したグループと比較したところ、大豆油のカプセルを飲んだグループの方が攻撃性と強くした結果が得られました。
悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防する
日本の死亡原因第2位の「心臓病」(心筋梗塞、狭心症など)第3位の「脳卒中」(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)の直接的な原因となるのが「動脈硬化」です。動脈硬化の原因に悪玉コレステロールがありますが、DHAには悪玉コレステロールを減らすことで、動脈硬化を予防します。また中性脂肪を減らす働き、血圧を下げる働きもあります
DHAが血液循環を改善する 臨床試験
DHAカプセル(DHA含有量29%)を28日間服用し、その間の血液中におこる総コレステロール値、悪玉コレステロール値、中性脂肪値、血圧値を調べました。その結果、すべての値が減少しました。
DHAが脳梗塞後の症状にあたえる影響 臨床試験
脳梗塞のラットをDHAを30日間投与したものとDHAを投与しなかったものとにわけてラットの脳梗塞後の脳の状態を観察した結果、DHAを投与したラットの方が脳梗塞の領域が少なかったです。
DHAを投与していたラットの脳梗塞1週間後の神経細胞の状態を組織染色で確認したところ、遅延性の神経細胞死が少ないという結果が得られました。さらに脳梗塞状態になったラットの八方迷路での空間認知能力を確認したところ、DHAを投与したラットは不正解数が格段に少ないという結果がでました。
2004年には、FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)が「DHAを含むω-3という脂質が冠動脈心疾患の危険率を低下させる」と認めています
DHAは脳血管性痴呆症にもアルツハイマー型痴呆症にも効果がある可能性
「老人性痴呆症」には「脳血管性痴呆症」と「アルツハイマー型痴呆症」があります。
脳血管性痴呆症の原因としましては、脳の神経細胞を養う末端の毛細血管が何ヶ所も詰まり、その先の脳細胞が死んでしまうことが原因でおこります。
DHAには動脈硬化、血栓の形成を予防し、血圧を下げる働きがあり、脳卒中を予防します。また脳内にDHAを補給してあげれば、死んでしまった細胞の分の働きを周りに残っている脳細胞が補ってくれます。こうして、DHAは脳血管性痴呆症を予防します。
アルツハイマー型痴呆症は脳の「海馬」と呼ばれる部分の脳細胞が死滅することにより起こる痴呆症です。DHAとの関連を調べた研究では、アルツハイマー病以外で死亡した人の海馬付近のリン脂質中のDHA含有量は16.9%であったのに対して、アルツハイマー病で死亡した人の海馬付近のリン脂質中のDHAの含有量は7.9%でした。このことより、DHAがアルツハイマー病を抑える働きがある可能性が考えられます。
DHAと老人性痴呆症にあたえる影響 臨床試験
入院中の老人性痴呆症患者18人(脳血管性痴呆13人、アルツハイマー病5人、患者の平均年齢80歳)にDHAカプセル(1錠70mg)を1日10〜20錠を半年間服用させDHAと老人性痴呆症との関係を調べた研究が群馬大学医学部で行われました。
脳血管性痴呆症患者では13人中10人に生活意欲が高まる、妄想が減るといった改善がみられ、アルツハイマー病の5人では、意欲、対人関係、おちつきなどでやや改善がみられました。
またDHAを服用しなかった患者が、知的機能面で徐々に低下したのに対し、服用した患者は、計算力、判断力の改善がみられました。
DHAが必須脂肪酸の代謝物質の生成、産出を抑える
花粉症を悪化させる一つの要因として必須脂肪酸があります。必須脂肪酸のうちのリノール酸は代謝されプロスタグランシン類(又はロイコトリエン類)に変換されますがこれらは炎症を引き起こします。DHAはこれらの生成、産出を抑える事によって、花粉症を抑えます。
DHAとアレルギーとの関係を調べた臨床試験
マルハ中央研究所では東北大医学部などと共同研究を行い、アトピー性皮膚炎として皮膚に「かゆみ」があってアレルギー体質などの条件を満たす26人(男19人、女7人、2〜39歳)に、一日につき400〜900mgのDHAを14週間内服させました。
その結果、「かゆみ」「しっしん」「あかみ」などの症状が緩和されました。
目の網膜には多量のDHAが含まれている
目の網膜には50%と多量のDHAが含まれており、このことよりDHAは網膜機能に大きな影響を及ぼすと考えられます。
DHAが視力を回復 研究結果1
千葉県Y町小学校では、DHA入りの給食パン(DHA含有量300mg)を週1回、3年間食べ続けた結果、食べる前では郡内6市町のうち5位であったのが、1位まで上昇しました。(視力1.0以下の生徒数が一番少ない)また視力が0.2以上向上した児童が36%いました。
DHAと視力を回復 研究結果2
サルを2世代に渡ってDHAを含まない飼料で飼育して比較する試験が行われました。その結果、生後4週間、8週、12週の視力測定で、DHAが欠乏しているサルの視力が劣っているといった結果がでました。
DHAのその他の働き(ダイエット効果、生理痛の改善)
マルハ中央研究所では月経困難症を有する患者50人に対して、一月経期間中に5日間、一方にDHAカプセルを2粒、もう一方にオリーブ油カプセルを投与しました。
DHAを投与された患者のうち84%が何らかの生理痛改善効果があったと答えたのに対しオリーブ油では約47%が改善効果がなかったと答えました。
また別の研究で9ヶ月齢のマウスにDHAを多く含んだ食事を4ヶ月間摂取したところサフラワー油を摂取させたマウスより体重が少なくなりました。
DHAとEPAの違い
EPA(エイコサンペタエン酸)とはDHAと同様、魚の油に多く含まれており、化学構造式も本当によく似ています。
EPAがDHAと違うところは、DHAは脳の働きに影響を与えることができるのに対し、EPAにはその働きがありません。その理由としてDHAは脳を毒物から守る血液脳関門という関所と通過することができるからです。
逆にEPAはDHAと比べて抗血栓作用が強いことがあります。血液中に入ったEPAは、血小板でプロスタグランディンI3 という物質を作り、これが、血液をかたまらせにくくするため、血栓ができにくいサラサラな血になるというわけです
酸化しやすく、過剰摂取すると出血しやすくなるなどの問題もある
DHAは酸化しやすく、古くなって酸化するとがんや老化の促進原因となる過酸化脂質に変わります。魚から摂取する際には鮮度に注意し、また酸化を防ぐための抗酸化物質ベータカロテンやビタミンC、ビタミンEなどと一緒に摂取するのが良いでしょう。
DHAを過剰に摂取すると、n-6系とn-3系の脂肪酸のバランス崩れる、血液凝固作用が鈍って、出血しやすくなったり、出血の際に血が止まりにくくなる可能性があります。
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