2012年4月16日月曜日

冬季に流行する胃腸カゼ(感染性胃腸炎)


2006年12月27日更新

平成17年、年明け早々に、全国規模でのノロウイルス感染症の老人施設における流行と、それに伴う死亡者の発生が報道されました。県民の皆様は冬に流行する感染性胃腸炎があることを知り驚かれたことと思います。しかしながら従来から冬の食中毒は、細菌性食中毒の多い夏とは異なり、ウイルス、特にノロウイルス−従来は小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれていました−が原因の多くを占めることはよく知られていました。ノロウイルスはウイルス性食中毒の主要な原因ウイルスで、生カキの喫食に起因する食中毒事例がよく知られています。しかし、晩秋から春先 (11月〜5月) にかけて、保育園や学校、病院や高齢者施設などでは、 ヒトからヒトへの感染や汚染された器具を介したノロウイルス感染症による急性胃腸炎の集団発生が起きていることがわかってきました。このような事例の発生時期はインフルエンザの流行期とちょうど重なることから、従来はこのような事例の多くは集団かぜ、胃腸カゼの集団発生として取り扱われてきていたようです。

臨床症状

ノロウイルスによる急性胃腸炎の主な臨床症状は、下痢、嘔吐、腹痛や軽度の発熱です。通常は2〜3日ほどで回復しますが、乳幼児や高齢者、体が弱っている人などでは脱水や合併症により重症となることがあります。ノロウイルスはウイルスが口から入ることにより感染しますが、食物や水に含まれるウイルスだけでなく、患者の便や吐物に含まれるウイルスによる汚染あるいは空気中に舞い上がったウイルスを含む飛沫を介した二次的な感染があります。症状が消えた後も3〜4日、長い場合は1〜2週間程も便にウイルスが排出されるので、感染予防上の注意が必要です。


産後のうつ病の薬

治療は脱水予防など対症療法を行い、ウイルス特異的治療法は現在ありません。したがって流行時に全ての患者に対してノロウイルスの確定診断をする必要度は低いですが、臨床症状のみからノロウイルスと断定することは困難です。ノロウイルス感染の確定診断には糞便のウイルス学的検査が必要となります。

集団発生例

諸外国では、病院やホテル、飲食店、客船(クルーズシップ)などにおける集団感染例が多く報告されており、アメリカでは年間2300万人の発生があると推定されています。日本でも散発的な集団感染例はこれまでにも報告されていましたが、平成17年1月、老人施設内でのノロウイルス(NV)感染症に伴う死亡が問題視され、厚生労働省が調査したところ、平成16年11月から平成17年1月12日までに、全国の236施設において計7821人の集団発生事例がありました(厚生労働省報道発表資料:平成17年1月12日)。愛知県からは5施設181人が報告されています。NVは食中毒の原因ウイルスとしてよく知られていますが、食中毒事例以外にも、患者の嘔吐物を長時間放置したためNVを含むエアロゾルによる空気感染が示唆され� ��事例、嘔吐物の処理が不十分で周辺の環境汚染がノロウイルスの感染拡大を招いた事例、あるいは胃腸炎症状を呈していた児童が給食当番をしたことによる学校内での集団発生事例などが全国から報告されています。これらの事実は、NV感染症が食中毒としてだけでなく、感染症としても対処が必要な疾患であることを示しています。


NVが含まれることがあるので、嘔吐物や下痢便の処理にあたっては手袋、マスク及び眼鏡あるいはゴーグルを着用し、感染性廃棄物として、密封状態で運搬・処理する必要があります。また、処理に使用した用具や嘔吐物周囲も広めに消毒が必要です。NVは比較的消毒薬に強く塩化ベンザルコニウムは無効、70%アルコールでも完全な消毒はできません。従って200ppm以上(0.25%〜1%程度)の次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)で処理するか、85℃1分以上加熱消毒する必要があります。

NVは経口感染するウイルスですが、口に入るまでの感染経路には接触が原因であったり、吐物周囲に生じた飛沫が原因であったり等、多様な形態が想定されますので、集団発生の原因究明にはウイルス学的検査とともに詳細な疫学情報の収集が必要となります。

*2003年(平成15年)8月29日に食品衛生法の一部改正が施行されたことに伴い、ウイルス性食中毒の病因物質の「小型球形ウイルス、SRSV」が「ノロウイルス」に改められました。


老人ホームでのノロウイルスの集団感染を体験された医療従事者の方からノロウイルスに関する質問を受けましたので、Q&Aとしてその内容を紹介致します。

Q1  ノロウイルスは吐物や便などが衣服に付き、それが乾燥した場合はどの位その状態で生存し続けるのでしょうか?


  ノロウイルスは培養細胞で増やすことができないウイルスですので、現時点ではノロウイルスの乾燥状態での安定性に関するデータはありません。しかし、ノロウイルスで室内環境が汚染されたホテルに宿泊した客に、5ヶ月間にわたりノロウイルス感染症が発生した事例や病棟での集団感染が終息した13日後に病室のカーペットを交換した職人がノロウイルスに感染した事例が海外では報告されています。また、ノロウイルスと同じ科に属するネコカリシウイルスが20℃の乾燥環境表面で3〜4週間生存することなどの報告を考え合わせますと、ノロウイルスは環境中で比較的長く生存していると思われます。従って、吐物や便で汚染された衣服はウイルス感染の危険性があるものとみなして直ちに交換することが必要 です。

Q2  入浴について:当施設では感染していない人から入浴し、次に発症したが既に症状のない人を石鹸で洗体してから入浴して頂き、最後に下痢が少々残っている人はシャワー浴又は清拭にしております。浴槽から出た後、再度シャワーでよく流しています。全員終了後、塩素系で浴槽や諸々洗浄しています。この方法で問題はあるでしょうか。

  老人ホームには易感染性の人が多く、また、感染症に対する重症化率が高い集団であること等を考慮しますと、下痢症状の残っている患者さんに関しては原則禁止の方がよろしいかと思います。

Q3  現在職員全員が常時マスク着用となっています。吐物にウイルスが含まれているということから、唾液も危険という考えのようです。空腸で増殖するということを読みましたが、激しい嘔吐のある時は理解できますが、全く嘔吐もなくなった状態で唾液にノロウイルスは存在し、会話などによって唾液が他人の口に入り感染することは2週間もの間現実にあるのでしょうか?


  ウイルスは空腸で増殖しますが、嘔吐の際には空腸から逆流して胃の内容物と一緒に口から排泄されます。嘔吐後しばらくは口の中にウイルスは存在しますが、常に排泄されているわけではありません。嘔吐が収まれば、口の中にウイルスが出てくることもありません。

Q4  免疫について、半年〜2年間ありという情報があります。今回入居者や介護職員の中で、約4〜5日空けて同症状を繰り返した者がいます。これはノロウイルスに2度感染したのではなく、別ものと思った方が良いのでしょうか?


  ご質問のウイルス感染に関しては3つの可能性が考えられます。


@ ノロウイルスに対する抗体が産生される前に、再び多量のノロウイルスに暴露されたことで発症した可能性

A ノロウイルスの血清型には大きく分けて2つのグループ(G)…GT型とGU型…があり、更にGT型には9種類、GU型には約20種類の血清型があるといわれています。毎年、数種類の血清型のウイルスが検出されますので、2回目に別の血清型のノロウイルスに感染した可能性

B 冬季に下痢を起こすウイルスには、サポウイルス、ロタウイルス(A群は幼児で、C群は小児や成人で)アデノウイルス40、41型などがありますので、ノロウイルス以外のウイルスに感染した可能性

ご質問の内容について明確な返答をするためには、発症者のウイルス検査が必要となります。

イギリスでは2〜3年前からノロウイルスによる院内感染が多発し、病棟閉鎖等が相次いだことから、公衆衛生検査サービスのワーキンググループがノロウイルス感染の対策マニュアルとしてJournal of Hospital Infection、45:1-10(2000)に「Management of hospital outbreaks of gastro-enteritis due to small round structured viruses」を報告しています。


また、アメリカでは豪華客船(クルーズシップ)での食品を介さないノロウイルスの大規模感染が複数事例発生しています。アメリカの疾病対策予防センター(CDC)は、船内環境のウイルス汚染が感染拡大を招いた要因であることを指摘しています。従って、感染拡大を防止するためには、ノロウイルスの集団感染の端緒を早期に探知し、生活環境の浄化と居住者の手洗いの励行が重要と考えられます。



These are our most popular posts:

嘔吐 - Wikipedia

また、車や船舶、遊園地の遊具などで長時間もしくは激しく揺れる環境下にあった場合、 「酔い」が発生して嘔吐に至る場合がある。 ... 喉の奥にモノが詰まった時同様の処置を するが、乳幼児の場合などでは、逆さにして背を強く叩いたり、大人が口で幼児の鼻と ... read more

子供の嘔吐から考えられる病気

子供の嘔吐はさまざまな病気で見られますが、発熱などのときに副次的な症状として 起こる場合については、「子供の発熱」・「子供の便秘」・「子供の下痢」をご覧ください。 ここでは、病気の前兆が何もないのに突然起こる嘔吐や、子供に特徴的な嘔吐について ... read more

嘔吐と対策 / こどもふれあい広場 / 西日本新聞

2006年10月25日 ... 吐き気を催した後に嘔吐するのが普通ですが、いきなり嘔吐と言う事もあります。 ... て おり、微妙な感情にも左右され、いやな臭いを嗅いだり、不快なものを見たり聞いたり するだけでも大脳皮質を介して嘔吐が発生します。 ... 幼児から年長児。) ... read more

嘔吐下痢症/感染性胃腸炎 ノロウイルスを中心に

ここでは、熱もなく突然吐くという症状から起こることが多く小児に最も多く流行する嘔吐 下痢症について説明します。 ... 小児科では嘔吐下痢症と呼ばれることが多く、冬の前半 はノロウイルス(過去にSRSV、ノーウォーク様ウイルスなどと呼ばれていたものとほぼ 同じもの)が多く、症状の .... 酸性物質があると塩素が発生しますので注意が必要です。 read more

0 件のコメント:

コメントを投稿